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繁華街に行かなくてもここで!ご近所の老若男女がぶらり/千駄木の住宅地にある「珈琲店 こもれび」

東京メトロ千代田線千駄木駅から団子坂をあがり、森鷗外記念館を過ぎてしばらく、右手の路地を入ったあたりにある、「珈琲店 こもれび」。近くには、樹木の多い公園や、それに隣接した「谷根千記憶の蔵」がある。

路地に並ぶ住宅はどこも大事に育てられた草花や木がいっぱいで、小さな畑もある。「こもれび」というネーミングがぴったりな環境だ。1998年には、日本医科大学病院の近くに出店していたが、2010年からは、現在の千駄木5丁目に店開きをした。

「お店の名前は、森の隠れ家のイメージで。覚えてもらえるように、ひらがなにしました」とオーナーの縄野洋子さんは言う。もともと喫茶店が好きだった縄野さんは、ご夫婦で喫茶店を経営したいと思っていたという。「たまたま空いている建物があって、喫茶店にしたいと思いました。住宅地の中でやっていけるか、かなり悩んだ末、開店に踏み切りました」と縄野さん。蓋をあけてみると地元のお客さんがたくさん来店、その心配はなくなった。「住宅地なので、『繁華街に行かなくても、外食・喫茶ができる』と、みなさんに喜ばれるのです」

繁華街の珈琲チェーン店と違う良さは、普段着で、1人でも、ご夫婦2人でも、子ども連れの家族でも、知り合いのグループでも気軽に入りやすく、時間もせかされず、ゆっくりと、喫茶、食事、おしゃべりが楽しめるところだろう。

縄野さんにお話を伺おうと、平日の午後、閉店間際に、「こもれび」を訪れ、珈琲メニューの一つ「こもれび珈琲」をオーダーし、味わっているところへ、駆け込みで2組のお客さんが来店。常連らしき方は、縄野さんと笑いを交えておしゃべり。話はつきないようだった。

以前は、定期的に落語会をお店で開催していたが、「落語会でお互い会っていると思いますが、」と言いながら、私にもその常連さんを紹介してくれた。地域の活動の打ち合わせの場所として使われることも多く、縄野さんの紹介でそれぞれ別の活動のメンバーにも、お互いに知り合いが増えていく。

縄野さんは、「私は岩手出身なのですが、地元の同級生が千駄木に住んでいて訪ねて来てくれることがあります。小さい頃に近くの千駄木小学校、文林中学校に通っていた人が、今は違う場所に住んでいても千駄木が懐かしくて、この近所を散歩していたら『こもれび』を見つけて、『わぁ、嬉しい』と入ってくれて、くつろいで昔話を楽しんでくれる。そんな場面に出会うとき、ここにお店を作ってよかったと思います」と笑う。

お店のメニューは、子どもから年配のお客さんまで、老若男女に食べてもらえるように考え、珈琲もなるべく好みに合うように、酸味、苦味、苦味の中に酸味、アメリカン、と4種類そろえた。もちろん食事もできる。「週替わりカレー」「ハンバーグステーキ」「パスタ」「ピラフ」「オムライス」「トースト類」や「サンドイッチ類」、スイーツも「クレープ」「アイスクリーム」、興味深い「珈琲ぜんざい」などいろいろある。

以前はどこのまちにも、「珈琲店 こもれび」のような喫茶店があったが、人の生活や街の変化や跡継ぎ問題のなどで、どんどん減ってきている。このようなまちの人の居場所となる喫茶店、いつまでも残ってほしい。(稲葉洋子)

珈琲店こもれび(千駄木5-14-23)10:00~18:00(金曜~17:00)木曜定休

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