大塚三丁目交差点から春日通りを大塚方面に行き、左手の路地に入ったところに、「居酒屋でんでん太鼓」はある。ちょうちんがぶら下がっている外観は、昭和のたたずまいだ。がらりと引き戸を開けて入ると、イベントの打ち上げ宴会でワイワイと盛り上がっていた。狭い店内はアットホームな雰囲気。「気軽に楽しくちょい飲みしていただければ」と、店主の清水大介さんは言う。自宅近くに居抜き物件が出た際、知人に「やってみたら」と勧められ、「成功も失敗も糧になる」と2017年にオープンした。

店の入り口を示す春日通り沿いのネオンサインに照らされるのは「大塚上辻町会」の掲示板だ。「もちつき大会」「避難所運営訓練」「防災フェスタ」といったチラシが貼られている。大塚生まれ、大塚育ちの清水さんは上辻町会で活動している。「子どものころ、地域の世話になったし、お祭りで楽しませてもらったから、今度は自分の番」

コロナ禍で居酒屋の営業ができず、町会のお祭りも中止になった。子どもはあっという間に成長する。小学生がコロナ明けには高校生になっていた。その貴重な数年間、お祭りを開けず、自分が経験したような楽しいことを、子どもたちは経験できなかった。「ほんと、ごめん。やらないのではなく、どうやったらできるのかを、なんでもっと考えなかったのかと悔やまれた」。コロナ明けからは町会だけでなく、「文京思い出横丁」や「RUN伴文京区」といった区内の他のイベントにかかわるようになった。「店と地域活動を並行してやってる感じですね」

町会の外に出て改めて気付かされた。自分たちも楽しみながら、子どもたちを楽しませる活動をしていくことの大切さ、を。普段から培われた地域のチームワークは、防災や防犯に活きる。「避難所で知ってる人100人で過ごすのと、知らない人100人で過ごすのは全然違うでしょ」。そういう地域のつながりや町会の良さを、学生にも伝えたい。そんな思いから、様々なイベントで知り合った学生を町会活動に巻き込んでいる。

「出来る限りボランティアさんの名前を覚えて、一緒に盛り上げてもらえるようにしています」。学生ボランティアとかかわるときは、一人ひとりと関係を築いて仲良くなって、適材適所の配置を考える。「学生側も身になる経験ができる方がいいでしょう」。学生たちがもちつきをやっていたら、地域の子育て中のパパも入ってきやすい。町会の潤滑油、呼び水になっている、という。知り合いの学生が増えれば、店のアルバイト確保もできる。学生たちが店に飲みに来てくれる。好循環が生まれた。

お店の看板メニューの「ナポルドン」は、近所の喫茶店の先輩からナポリタンをやればと言われたことが発端。同じものを出したら競合するから、うどんならどうかと考えて作ったら案外いけた。最初は具材を薄く切った方が見た目もいいと思ったが、お祭りの鉄板で焼いていると焦げてしまう。そこで太めに切ったところ、食感があっておいしいことがわかった。「シシトウよりピーマンがよいとか、お祭りの鉄板でフィードバックされてパワーアップしました」。

また、イベント時やお子さん連れへのサプライズメニューとして、たこ焼き、手巻き寿司、節分の恵方巻き、豆まきなど、お客さん参加型の仕掛けも用意し、お客さん同士の交流を盛り上げている。

もともと、子どものころから人を楽しませるのが好きだった。劇の台本を作ったり監督をしたり。出演するのも作るのも好きだったので、飲食のアルバイトをしながら映画や演劇業界の仕事を志していた。縁あって居抜き物件と出合い、居酒屋をやることになったが、客を楽しませたいという思いは同じ。「居酒屋でもしゃべってる方が多いぐらい」。それはかかわっているイベントでも同じだ。いかに人を楽しませるか、常に考えている、根っからのエンターテイナーとでも言えようか。「お祭りやイベントばかりやっているので、今年は本業の居酒屋も頑張らなきゃ(笑)」(敬)
居酒屋でんでん太鼓(文京区大塚5-2-3)営業時間:月~金18:00-23:00、土17:00~23:00 日曜定休

