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「知らないこと」を知るために、本屋へ行ってみよう/谷中のシェア型書店TAKIBI

安藤哲也さんといえば、文京区民でありメディアにもしばしば登場する全国区の有名人。「笑っている父親を増やそう」とNPO法人ファザーリング・ジャパンを立ち上げ、「イクボス(子育てに理解のある上司)」を唱え、イクメンプロジェクトとか男女共同参画推進とか、国や都の委員も務め、全国を講演で飛び回っていた。3児のパパとしてPTAなど地域活動にも熱心に取り組んできた。その安藤パパが、谷中にシェア型書店(共同書店)を開いたというので、訪ねた。谷中の「へび道」にあるTAKIBIという。

「本屋をやりたいわけじゃない。本を中心としたコミュニティーを作りたいんだ」。シェア型本屋は、本棚を複数の棚主が借り、棚主が自分で本を用意して並べ、棚貸し料と売り上げの一部を本屋に支払うしくみ。2023年7月5日に開店したばかりだが、すでに約60人の棚主がいる。クラウドファンディングをやったので、全国から棚主が集まった。「全国的に本屋が消えている。従来のやり方では復活できない。ならば自分がモデル的にやってみようと思った」

(貸し棚は場所によってスペースも値段も違う。真ん中の段が一番高い)

安藤さんはもともと、千駄木の往来堂書店の初代店長を務め、大手企業で電子書籍事業も手掛けた本屋畑の人だ。コロナ禍で講演活動が減って時間ができ、自身も還暦の節目を迎えようというタイミングで、「イクメンもイクボスも女性活躍も当たり前になる。次はなんだろうと考えたとき、地方創生というキーワードが降ってきた」。2022年2月に縁あって山形県の小さな町に1カ月ほど滞在したとき、仲良くなった移住組のカフェの店主から「本屋やっていたんだったら、うちの町に本屋を作ってよ」と言われた。町の本屋はその6年前になくなってしまい、休日に山形市まで買いに行くのだという。

本を中心にしたまちづくりができないだろうか――。帰京後すぐ、つながっていた書店人脈を集め、NPO法人ブックストア・ソリューション・ジャパン(BSJ)を立ち上げた。全国の無書店地域の自治体に向け、「まちの本屋」復活による地方創生を提案している。さっそく、鳥取県の町から依頼が飛び込んできた。「東京と同じことをしてもだめ。わがまちの本屋、という意識をいかに醸成できるかがポイント」

本屋なんていらない、学校に図書室があるし、まちには図書館がある、という論を耳にするが、「図書館はストックで、本屋はフロー。本屋には新刊が毎日入ってきて、世の中の動きが見える」と安藤さん。「なにより、まちの子どもたちの育成につながるし、人が育てばまちが育つ。そこのところがなかなか理解されないんだよね」

本は人と人をつなぐツール。TAKIBIでは棚主がモデレーターとなって課題本を出し、読んだ人が集まって交流する読書会が開かれている。「同じ本を読んだ人同士は簡単につながれる」。棚主は本の補充や入れ替えで来店するので、TAKIBIで棚主同士が出会うこともあるし、客が棚主と出会うこともある。山の本ばかり置いている棚から本を買った山好きな客と、たまたま居合わせた棚主の話が弾み、今度一緒に行こう、と意気投合するケースも。「あそこに行けば面白そうな本があるかもしれない。誰かいるかもしれない。そんな場になれば」。カフェスペースがあるので、その場にいる人と自然と会話が生まれそうだ。

いまやネットで簡単に本が買える時代。しかしネットでは、自分の関心のある分野しか「お薦め」されないし、偶然の発見の機会がない。「本屋だと、探していた本の隣に面白そうな本が並んでいて、そっちを買ってしまうようなことが起こる」。知らない分野に触れるには、本屋という現実の空間が必須なのだ。「知らないことを知るために、知らない本と出合う。知らない人と出会う。本の中には『知る喜び』がある」。最近、本の中に「正解」を求める人が増えたように思っている。「人それぞれなんだから、正解なんてない。ただ、正解らしきもの、はあるかも」。本を読んで、知らないことを知っていけば、自分なりの正解が見つかるかもしれない、という。

読書会だけでなく、著者を交えたトークライブなどのイベントもどんどん企画している。TAKIBIに行けば、知らない世界に足を踏み入れられるかも。詳細はサイトで。(敬)

Books & Coffee谷中 TAKIBI(台東区谷中2-5-15 寿店舗)

・電話:03-6826-9841

・Eメール:ando@takibi.work

・営業時間:9:00〜18:00

・定休日:月曜日


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