「ただいまー!」
息子が何やらおもしろそうなものを抱えて帰ってきました。画用紙でできた舞台セットのような何か。舞台上にいるのは、ポクポク木魚をたたくお坊さんとオバケさん。上手側には扉のようなもの。ひっくり返してみると、扉の向こうには青空と地球、そして地下の蟻。
「表と裏」という御題のもと、図工の時間に作ったそうです。この世とあの世……何か思うところがあったのかしらと本人に尋ねてみても、「うーん……忘れた! 作ったのは2学期だし」と。でも、「舞台の下にいるこの人達は観客だよ。ニコニコで拍手しているところを描きたかったんだけど、時間切れで表情までは無理だった~」と教えてくれました。
ちょっとはちゃめちゃなんだけど何か救われるようなところもあり、そのままリビングに飾ることにしました。
今月の1冊はこちらです。
『生きる』
谷川俊太郎 詩
岡本よしろう 絵
福音館書店
国語の教科書でも取り上げられるなど多くの人が知っている詩『生きる』が絵本になったもので、夏のある1日が子ども達の視点で描かれています。
今リビングを見渡すと、床に座り込み黙々とレゴを組み立てる子どもが一人。いろんな角度から眺めてはやり直し、また作ってはやり直し。母の視線に気づいたのか、一瞬頭をあげた後またすぐ手元に視線を落とし、「ねえ、今何つくってるかわかる? まだ教えな~い」とカチャカチャ。息子の目に映る今この瞬間は、どんなだろう?
思わず大きく息を吸い込むと、どこからともなく沈丁花の香りが。
もうすぐ春です。
(OSAGARI絵本・伊藤みずほ)