「荒川冒険あそび場」や「自主保育<たねっこ>」など地域の活動に携わっているデザイナーの小宅(おやけ)くうさんが、谷中にお店を出したという。
「よみせ通り」に面したビルの中、1Fの店舗は、窓からちょっと覗いて見ただけで、楽しそうな空気に誘い込まれて、思わずドアを開けてしまう。店内は、綺麗に染められた布で作られたドレス、帽子、スカーフが並び、大きな木のテーブルでは、大人と子ども数人がおしゃべりしながらお茶を飲んだり、なにやら作品を作ったりしている。
ふと値札を見てびっくり。○○円ではなく○○wingと表示されている。さっそくくうさんに聞いてみた。
「kuukiの通貨単位はwingなんです。1円/1wingといったところですが、流動する時もあり、子どもたちが、これほしい!と言ったとき、1000wingが1円ということもあるんです」
「お金はもちろん大事ですが、通貨は本来もっと自由で自在に交流するためのツールだと思います。重さを与えずに羽根のように軽やかに世界中を跳び回り人と人がつながるための楽しいかたち。これがwingです」
経営は成り立つのだろうか。くうさんは「いただくところからは1円/1wingでいただいているから大丈夫」と笑う。
くうさんは何のデザイナーなのか。
「私は“舞台衣装作家”です。唄う人踊る人話す人、ちいさな1人舞台から、大劇場での大人数の衣装まで制作したり、コーディネートすることが主な仕事です。ですが、やりたいことがたくさんあって」と笑う。「舞台演出、空間ディスプレイ、脚本、草木染めの講師、魔法学校の開講、地球をまるごと遊ぶようなイベントとか」
「ま、まほーがっこーですか?」
魔法学校を作りたいという人に初めて出会った。
お店を持つことは、たくさんあるやりたいことリストのひとつだった。
「谷中や日暮里・上野などで、沢山の繋がりの中で安心して子育てをしてきました。谷中近辺は私にとっても故郷のような大切な場所。まさか、ここにアトリエを持てる日が来るなんて想像すらしなかったドッキリな事件でした!」
このお店を拠点にやりたいことリストを実現していくのだろうか。
「ここでは、いわゆる製造過程、舞台裏を全部見せていきます。いつでも何かを作ったり創造したりする場、みんなのアトリエです」
2020年からはみんなで物語を描いたりその物語からイメージをふくらませたりして衣装を作るワークショップを開催したいという。
「完成した世界にひとつのSpecialな衣装を纏い谷中の町を歩いてパレード!できたらいいな!」
まちが舞台、まちの人が役者、それぞれが思い思いの衣装をデザインして身に纏い、みんなでまちという舞台をファッションショーのように歩く、というイメージだろうか。
これまでも、ファッションショーは毎年開催しているという。大好評で、大阪梅田や東京でも開催している。
モデルさんはまちの大人や子ども、これぞ最高にお洒落という衣装で身を飾り、ロードを歩くそうだ。
「私は小さい頃から絵を描いたり裁縫したり、工作したり。上手ではありませんが、作ることが大好きでした。自分の作り出したものを通して、喜んでもらったり、元気になったり。それを見ることが嬉しくて続けていたらいつのまにかお仕事になっていました」とくうさんはいう。
そんなご自身の経験から子どもたちに伝えたいことがあるという。
「自分の大好きを大切にしてほしい。恐れずに表現してくださいね。世界はきっと応援してくれます」(稲葉洋子)
kuuki 〒110-0001台東区谷中3-14-4
近々のイベント
★めでたい祭
2020年1月17日〜30 日/12:00〜17:00(水曜定休日)
麻飾りと結びの作品を展示販売。
★小宅くうさんが、衣装を手がけるコンサート
朝霧裕〜生声生音だけライブ「大きい声じゃ聴こえない」in狸坂文福亭
2020年2月8日(土)14時から
歌とギターとライブペインティングのコンサート