水道橋駅からミーツポートの脇を入り、ドームへ向かう通路、東京ドームホテルの「ふもと」に、コンテナの店舗がいくつか並ぶ。その一つが、クラフトビールとアジア飯の店「箱舟」だ。今は寒くて使えなそうにないが、屋上やテラス席もある。
文京区関口のカンパイ!ブルーイングと、北区東十条のLet’s Beer Works(レッツビアワークス)が共同で出店。タップはできるだけ「東京産」のクラフトビールをつなぐ方針だ。Let’s Beer Worksの阿川裕子さんは「東京のおいしいビールに出あってほしい」と話す。
もともと後楽園一帯には千川(小石川、礫川ともいう)や神田川といった川が流れていた。カンパイ!ブルーイングの荒井祥郎さんは「昔川が流れていたということで、箱舟と命名した。ここで飲んでもらってクラフトビールの世界へ漕ぎ出してほしい」と言う。そういわれると確かに、水に浮かぶ箱舟に見えなくもない。
カンパイ!ブルーイングは2019年、Let’s Beer Worksは2020年にオープンした自家醸造所だ。カンパイ!は醸造だけで、ビアバーに卸す形態。Let’s Beer Worksは土日にタップルームを開いてビールだけ提供している。東京ドームシティから出店の話があったとき、荒井さんは「そもそも醸造を1人でやっているので、ビアバーまで1人では手を広げられない」と考え、イベントなどで交流がある阿川さんに声をかけた。阿川さんも「レッツビアワークスのビールをどこで飲めますか?という声が最近増えてきた」と言い、ビールが飲めて食事もできる場をそろそろ、と考えていたところだったという。
しかし2人とも、飲食店の経験がない。料理好きの荒井さんが腕をふるう「乾杯!飯店」はポップアップでやってきたので、その路線で「アジアめし」の方針は決まった。そういえば以前、荒井さんのしびれる激辛麻婆豆腐を食べたことがあった(過去記事参照)。「海外の客も多いので、アジアのおいしいものを食べてもらえれば」と荒井さん。阿川さんは「ビールにはソーセージやハンバーガーを合わせる店が多いので、同じことをしてもな、と思って」。
マーガオ水餃子とか、翡翠鶏(とり胸肉の薬味きゅうりがけ)とか、ルーロー飯とか、アジアっぽいメニューが並ぶ。「凝りすぎてなかなか決まらない。考えすぎたメニューの方が注文少なかったりで」と荒井さん。「今さら、他店のメニューを見て研究したりしています」と阿川さん。とんがったメニューが登場するかもしれないが、いまは試行錯誤中だという。
肝心のビールは、カンパイ!とLet’sで箱舟オリジナルのはこぶねピルス、はこぶねホワイト、はこぶねセッションを醸造。「飲みやすさと、フルーティーさや香りが立っているなど、普段飲んでいるビールとは違うぞ、というのをはっきり出したいと思って作りました」。ほかは、それぞれが作っている個性的なビールと、イベントのコラボなどでご縁のある醸造所のビールをタップにつないでいる。
目下の悩みは、客の入りの傾向が読めないことだという。水道橋駅徒歩3分、東京ドームやホールの入り口といった立地面の良さから、千客万来と思いきや。。。「目の前に4千人収容の東京ドームホールがあって、満員だったにもかかわらず、来店者ほとんどないようなときもありました。かと思えばイベント開始前、終了後の5分10分で客が殺到したり列ができたり、瞬間最大風速がすごい」と阿川さん。「若い人はそもそもお酒を飲む人がすくなくなってきているし、推し活にすべてをつぎ込んでいるのかもしれない」と荒井さん。ノンアルも充実していて、クラフトコーラとか、クラフトジンジャーエールといった手づくり系があるほか、「推しのカラーがあったらいいかも」と、カラフルなソーダはマスクメロンやホワイトピーチ、ベリーザクロなど、さまざま取りそろえている。毎日が試行錯誤だという。
平日の夜、知人と出かけてみた。イベントがある日だったので、確かに通路は人でごった返していたが、お店はすいていた。イベントが始まった時間帯は、客がいなくなってしまった。仕事帰りのサラリーマン風の男性陣もいたけれど。荒井さんは「もっと知ってもらって、地元の人も取り込みたい。冬場はあったかメニューを出すとか、ゲストシェフが料理を出すなどのイベント的なこともやりたい」と話す。貸し切りの問い合わせもあるため、対応していきたいという。
今飲めるビールや料理の情報などはInstagramで発信中。キャッシュレス決済。テイクアウト可。
箱舟(文京区後楽1-3-61 東京ドームシティ)
営業時間:11:30 – 22:30