「おいしい!」「また参加したい!!」「次も楽しみです!!」外では滝のように雨が降るなか、ZOOMのチャット欄は好評の声であふれた。読み上げる3人の女性の顔はとても晴れ晴れとしている。
2021年7月11日、文京区関口にある我楽田工房で「グラノーラを作ろう!|楽して、ちゃんと食べて「美味しく」「楽しく」つながる」イベントが開催された。
このイベントは、同スペースを管理している我楽田工房と、文京区向丘にある大学生が立ち上げ経営しているカフェRural Cofee、文京区本郷にある発酵食品をテーマに営業している発酵するカフェ麹中の、3者が共同で企画したものだ。
第一回目の今回は、コロナ禍での開催ということもありオンラインで参加者を募集。当日は我楽田工房の藤原美穂さん、Rural Cofeeの小山田萌佳さん、麹中の川島玲子さんの3名が我楽田工房に集まり、さながらクッキング番組のようにオリジナルグラノーラのつくり方を披露した。
我楽田工房といえば日々さまざまなイベントが行われているスペースだが、グラノーラが主役のイベントというのは過去をみても群を抜いて不思議なテーマである。
なんでも事の発端は、Facebookの書き込みからだったという。我楽田工房の美穂さんがFacebookへ投稿した「グラノーラ最高!!」という一文を、麹中の玲子さんが発見。玲子さんはグラノーラの材料まで買ったところで、重い腰が上がらず、ながらくキッチンに眠らせてしまっていたため、美穂さんに相談したところ、「せっかくだからイベントにしちゃいましょう!!」となり、仲良しのRural Cofeeにも呼びかけ、今回のイベントになったのだという。
こんな軽いノリからでもイベントになってしまうのが、“ワクワクの連鎖を起こす”をテーマに据える我楽田工房のすごいところだ。
ちなみにグラノーラとは、オーツ(麦)などを加工した穀物加工品を、砂糖やはちみつ、メープルなどのシロップ、植物油やココナッツ油とで混ぜ、加熱したものを指す。個人的には、風味だけを楽しむコーンフレークという謎の思い込みがあったのだが、見事に裏切った結果となった。こういう驚きがあるから新しいことを知るのはやめられない。
さて、手作りグラノーラの作業時間は約40分。参加者は画面の向こうでそれぞれ準備したグラノーラづくりを進め、我楽田工房ではRural Cofeeの萌佳さん、麹中の玲子さんがそれぞれ別々のグラノーラを作っていく。
Rural Cofeeの萌佳さんは、ドライフルーツに自分たちが乾燥させたレモンを使用。もともとは業務で余ったレモンをコンポストにいれて堆肥していたそうなのだが、ためしにドライフルーツにしてみたところ、近所の小学生やお客さんから予想以上の好評をいただき続けているのだそう。
Rural Cofeeでは環境への取り組みとして、コンポスト以外にも、竹ストローの使用や資源を再利用するアーティストの商品などを販売。また地域や、生産地でのコミュニティづくりにも力を入れている。萌佳さんは大学生インターンながら、お店の一切の運営を任され、一人で切り盛りしているという。
グラノーラに塩味を加えるタイミングでは、麹中の玲子さんが、塩麹を加えていく。さらにはシロップを加える際には甘酒を投入し、これには進行を務めた我楽田工房の美穂さんも「大暴走だ」と笑っていた。
発酵をテーマに掲げている麹中。名前は地域のぬか床になりたいという想いから付けられた。ぬか床は外見上の変化はなくとも、中では活発に活動し、変化をし続けている。そんなぬか床のように、文京区の街も日々変化しつづていってしい、という願いが込められているのだ。となると、麹中はさしずめ、種麹にあたるのだろうか?
ランチ時はたくさんの会社員で賑わうという麹中。変化の連鎖は少しずつ広まっているのかもしれない。
作業では、参加者がチャットで材料の手順について質問したり、子どもが「できたよー!!」と見せてくれたり。画面越しにも関わらず和気あいあいとして、まるでリアルで一緒に過ごしているかのような一体感が感じられた。
最後に加える牛乳にも、環境への配慮を行っている3者らしく、植物性のミルクを用いるという一工夫。出来上がったそれぞれのグラノーラは、Rural Cofeeの萌佳さんが作ったグラノーラはレモンの酸味と材料の甘みがマッチし、麹中の玲子さんが作ったグラノーラは塩麹と甘酒が上品な甘みをつくりだしており、両社の個性が如実に表れた結果となった。
「繋ぐ」がテーマでもある今回のイベント。これから回を重ねていくうちにグラノーラを通じ、主催者や参加者、そして生産者や材料の生産地域などが繋がっていってほしい、という願いが込められているという
次回の開催は秋ごろを予定しているとのこと。グラノーラが紡いでいくワクワクの連鎖。これからの活動に期待だ。