満開の桜で彩られた播磨坂も、連日の雨で葉桜に。ああ今年もお花見できないまま終わっていくわ……なんて感傷に浸る間もなく、お店の前の通りには弾むような子どもたちの声が戻ってきました。
我が家でも、始業式前夜にお便りをあわてて探し、「あー、ランドセルの黄色いカバーも取らないと!」なんて(親が)大騒ぎしながら新年度が始まりました。でも、当の本人は相も変わらずマイペース。時間ギリギリに起き、朝食はあくまでじっくり優雅に味わう。「ちょっと、遅刻しちゃうから急いで!」と半ば強引に歯磨き→玄関へと誘導したら、忘れちゃいけない“あの儀式”をささっと。
「はい、だいすきぎゅっ! 先生のお話ちゃんと聞いてくるんだよ!」
「はーい、かっちゃまもお仕事がんばってね! 行ってきまーす!」
――あれは昨年の秋ごろだったか。朝から息子と大喧嘩した後、そっけなく「行ってらっしゃい」と、息子の目も見ずに送り出したことがありました。すると、なんとその後、息子は教室に入らず校庭で大の字になって寝ていたそうな。「今朝お母さんとケンカしちゃって悲しいんだ。授業を受けられる気分じゃないから、ぼーっと空を眺めていたんだ」と。後で担任の先生がお電話で教えてくださいました。
それ以来、どんな朝でも必ず玄関で目を合わせ、「ぎゅっ」をしてから送り出しています。息子が2歳くらいのときに何度も一緒に読んだ、この絵本を思い出しながら。
『だいすき ぎゅっ ぎゅっ』
フィリス・ゲイシャイトー/ミム・グリーン ぶん
デイヴィッド・ウォーカー え 福本友美子 やく
岩崎書店
このお母さんうさぎのように、いつでも「ぎゅっ」と子どもを両手で受け止め、時に傷ついた羽を休ませ、また次なる冒険に送り出せるような安全基地でありたいな。でも、お母さんうさぎの表情をよくよく見てみると、『ぎゅっ』に元気づけられているのは親のほうかもね」なんてことも思ったりするのです。
(OSAGARI絵本・伊藤みずほ)