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アクセサリーでお洒落に笑顔に/谷中へび道のアクセサリー工房「HomiHome無厭荘(ブオンソウ)」

「ご紹介したい方がいます」。美術家青島左門氏の展覧会会場で雨宮美穂(あめみやみほ)さんにお会いした。アクセサリーデザイン、製作をしていて、谷中にアトリエ「HomiHome無厭荘(ブオンソウ)」を開いているという。展覧会場には、雨宮さんが創ったガラスのアクセサリーも展示されていた。ガラスの粒を金属で繊細につないだいくつものアクセサリーだ。それは、「割れた車のサイドガラス」で創ったものだった。

約1年前、たまたまぶらりとアトリエの前を通りかかった左門氏が「おもしろそう」と入ってきた。いろいろな素材をコラボさせてアクセサリーを創っていると知って、「もしパーツを持ってきたら、何か作ってもらえますか」と尋ねられ、「『おもしろいですね。ぜひ』という話になりました」。
何カ月かして左門氏から手紙が届いた。中にはガラスのパーツが入っていて、「これで何か作れないか」と。小学生の娘さんが拾ってきた、壊れてばらばらになって落ちていた車のサイドガラスだった。

「『サイドガラスは割れたけど、人を傷つけることがないように砕け散る。やさしい割れ方をする。』という左門さんの気持ちが伝わってきたので、『やさしい』をテーマに創ろうと決めました」。その後も左門氏のことをいろいろ知ってアクセサリーの創作に取り掛かり、2カ月かけて、出来たのは展覧会直前だったという。「左門さんが見たのは、当日でした」と雨宮さんは笑う。

雨宮さんは、相手をよく理解してその人を思い浮かべてアクセサリーを創る。「作品は飾り物ではないので、その人のために想像しながら作ります」

谷中のへび道(不忍通りから三崎坂を少し上って右に折れた細い道)にあるアトリエ「HomiHome無厭荘」は7年前にスタートした。様々な素材、様々な色、様々な形、様々な大きさのアクセサリーが部屋中に飾られている。綺麗なのはもちろんだが、どれもみな他では見られない個性的なものばかり。置かれた家具もしっかりとした昔からのものだ。「無厭(ブオン)」は、「飽きさせません」という意味を込めた造語で、夫に名付けてもらったという。

「ここの建物と、へび道という場所も気に入りました。もともとここはバッグ工房で、古い工業ミシンがあったり、押し入れの中の壁とかも油紙が丁寧に貼られていたり。前に住んでいた方がいろいろな古い趣のある家具を置いていってくれたものを使ってます」。そのほかにも、この辺りで調達した調度品がここかしこに置かれている。雨宮さんは、「道具も地域のものが引き継がれていくのはいいな」と思っている。「ここは、まちがやさしくて、居心地いいです。作り続けられるかぎりはここでアトリエをオープンしていたいですね」

「アトリエにお客様が訪れて、アクセサリーによって、その人がより魅力的になる。そんな発見があるような楽しい場所でありたい」という。「アクセサリーひとつで、人がお洒落になり笑顔になる。それが嬉しくてやめられません」

竹で創ったアクセサリー

雨宮さんがアクセサリーに取り組むようになったのは、19年前。色の勉強をしてカラーコーディネート検定で資格を取った。工具も好き。「ペンチが大好きで、ペンチ売りのバイトもしました」と笑う。
まずは、相手の好みの色のアクセサリーを作っていこうと、色違いの天然石に工具で金具を組み合わせて作り、近所のママ友に作ったのが最初だった。年月を重ねるうちに、別の素材を求めて外国で調達するようになった。そのうちに、「竹」「漆」「銘仙」というような日本の素材に面白さを発見するようになる。いろいろな異素材を組み合わせて、「ミスマッチがしっくりとマッチした時の喜びは最高です」。

銘仙

組合せたい素材に出会ったら、まずその素材のプロの職人さんを探す。そして、この人だと思ったら会ってその素材でアクセサリーのパーツを作りたいという気持ちを伝え、作ってもらえるか、あるいは習えるか聞く。自分だけがよいのでなく相手にとってもよい取組みにして相手の方に敬意を表したいという。

プロの職人さんだけでなく、漆などは、谷根千界隈の知り合いに塗り方を教えてもらったりした。何かできそうだと思ったら、自分の足でいろいろな工場にも見学に行き、ここなら、と思ったら飛び込むという。「そんなふうに動いて、19年間やってきました」と振り返る。

以前は三越伊勢丹系の店に出展していたが、今も続けているのは、自由が丘のギャラリーとへび道のアトリエ。「毎年、春・夏と秋・冬は自分1人でテーマを決めて展示会を開いていて、そのたびに新作を必ず出すようにしています」

谷中では3年前から、靴のアトリエとショップの「SONOMITSU」、バッグの店「BOHEMI」と、3ブランドで一緒に「チーム谷中」を作り、展示会を開いている。「ステンドグラスの『nidoガラス』さんともコラボしていて」と、雨宮さんは楽しそうに語る。

今はフェルトボールのアクセサリーに取り組んでいる。こちらもフェルト作家さんにパーツ作りを教えてもらった。作品は10月24日から5日間、自由が丘のギャラリー「STAGE悠」(目黒区自由が丘1-23-16 1F)で展示する。31日から11月4日は、チーム谷中として合同展示会を「SONOMITSU」で開催する。展示会が目白押しだ。
来年は20周年を迎える。「なにか特別なことをやった方がいいかな」と考え中だという。どんなテーマでどんな新しいコラボを起こし、どんな新たな作品が生みだしていくのか、とても楽しみになった。(稲葉洋子)

HomiHome無厭荘(千駄木2-35-10)

メール: miho@homihome.com

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