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緊急時に助け合える関係づくりを/葛飾区でこども食堂・居場所づくりの団体「えまいま」、柴又に新拠点

寅さんや帝釈天で有名な柴又。大勢の観光客が向かうのとは反対側の静かな住宅地の中に、「えまいまハウス」が5月に本格オープンした。2017年から葛飾区亀有で活動している団体の新拠点で、古民家を借り、クラウドファンディングで資金を集めて整備した。

「わーやられた」。2階で子どもと遊んでいたのは「くいけん」こと柊平健貴(くいびらけんき)さん。福祉の仕事をしながら居場所の研究もしており、第1、第3土曜日に「みんなの居場所」として開いている「ふらっとホーム」のボランティアスタッフでもある。「ただいま!おかえりなさい!が言い合えるような場所を目指しています。子どもの遊び相手は、お任せください」と言う。

Eme-Imaえまいま」とは、「Emergency(緊急事態)にIma(今)備える」を意味する。メンバーの森谷哲さんは葛飾育ちで、ITの仕事をしているが、子どもができたタイミングで、地域に恩返しをしたいと思い、地域活動を始めたという。「熊本に移住した仲間がいたので、2016年の熊本地震の発生で、震災が自分事になった。防災コミュニティースペースをつくって人が集えば、つながりができるのではと思った」と話す。

えまいま代表の佐藤純さんも亀有生まれの亀有育ちで、看護師として災害派遣医療にも携わってきた防災の専門家。コロナ禍ではダイヤモンドプリンセス号でも対応にあたった経験がある。「災害時だけでなく、コロナ禍のような緊急事態で孤立して困っている人がたくさんいた。緊急時に助け合える顔の見える関係を地域でつくることが大事だと思った」と言う。

2017年から主に亀有を中心に活動を始め、子どもたちの放課後の居場所づくり「えまいまキッズカフェ」、コロナ禍でひとり親の子育て世帯向けの「えまいまフードパントリー」を始め、子ども食堂から始まった多世代交流みんな食堂「えまいまキッチン」など、活動を深めてきた。被災地支援ボランティアチームも結成し、能登半島地震の被災地で支援活動を続けている。

区役所や町会、地域団体とのつながりができる中で、かねて森谷さんが「空き家があったら紹介して」と言って回っていたのが功を奏し、柴又の空き家活用の話が浮上した。昭和に建てられた古い民家で、2024年秋にクラウドファンディングで資金を集め、ベランダの改修やキッチンの改装費に充てた。2025年5月に本格オープンにこぎつけた。

1階は和室とダイニングキッチン、2階は6畳2間と洋室がある。駐車場は駐輪場に、その上の半2階のようなスペースは食材や寄付品などの倉庫に活用。2階にはボールプールなどがあり、子どもたちが自由に遊べる。洋室にはマンガやボードゲームがぎっしり。ドアはアーチ形、天井の意匠も独特で、住んでいた人の息づかいが感じられる。

当面は、第1、3土曜日の午後、みんなの居場所「えまいまふらっとホーム」として開放している。亀有近辺の活動では、えまいまキッチンに毎回寄付してくれるおばあちゃんがいたり、ボランティアが毎回十数人来てくれたり、被災地支援ボランティアにひとり親家庭の親子が参加したり、つながりの広がりを実感している。

「柴又では町会長さん、民生委員さんにも挨拶しているが、つながりはこれから。ふらっとホームの活動のほか、地域の団体さんに場所を使って欲しい」と森谷さん。佐藤さんは「楽しいと思えることが大事。仕事じゃないので、ゆるく、あまりガチガチに決めない。地道に続けていくことが良いと思っています」と話していた。(敬)

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