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地域の工作室をつくりたい!育児真っ最中の女性が立ち上げた「もくもくはりねずみ」

「DIYが可能で、ものづくり活動をしても大丈夫な物件はないだろうか」。私市(きさいち)瑞希さんが探していて出合ったのが、自宅に近い文京区後楽の旧タバコ屋の物件。トイレもエアコンもなかったが、都心の立地にしては破格の家賃。2023年5月に契約し、「設備がなくてもいいからオープンしちゃえ。つくりながら考えよう」と、地域の工作室「もくもくはりねずみ(通称もくはり)」を開設した。いまも看板はタバコ屋のままだ。

3Ⅾプリンター、レーザー加工機、カッティングプロッタ「シルエットカメオ4 Pro 」、マイターソー万能すごい丸のこ、卓上ボール盤・・・よくわからないけど、すごいたくさんの機器がそろっている。訪ねた日曜日は、近所の人がクッションカバーを縫いたいと、ミシンを使っていた。これから結婚式を挙げるという夫婦は、ウェルカムボードを作成中だった。

私市さんは昨年出産し、夫は育休中で、夫婦で育児の真っ最中だ。夜泣きしたときにあやせる木のおもちゃをもくはりで手作りした。パーツを取ると、パスタメジャーにもなるという優れもの。

もともと、ウェブサイトやアプリケーションのデザイナーとしてデザイン制作会社に勤めていたが、数年前にフリーになった。「デジタル系のデザインは好きだけど、飽きてくるんですよね」。手を動かして、ものをつくりたい。時々、うずうずしてくる。そういうときに、気軽に木工をしたり、工具を使ってものをつくる場がない。ものづくりのシェアスペースはあるものの、電車に乗って行かなければならないし、10分千円とか、お金がかかる。「地域の工作室をつくりたいなと。さっと入って、やりたいことが実現できる場が欲しいと思って」。そうして生まれたのが、「文京区の工作室」もくはりだ。

木くずが出たり、音が出たり、においが出たり。クリエーターたちはものづくりをする場所がなくて苦労しているという。「ベランダで木を切っていたら苦情が出た、という人も。こういう場が必要」。とはいえ、家賃が発生するので、経営もしていかなければならない。そこで考えたのがクリエーターたちの「共同アトリエ」としての視点だ。複数の共同オーナーに月々定額を出してもらい、鍵も渡して、自由に使えってもらえるようにする。イベントやワークショップも開ける。作品を常時展示する棚貸しもする。「ここに人が来るしくみをつくり、使う人が増えればペイできる」

私市さんの大学の同級生、土屋恒人さんは共同オーナーの1人だ。電動工具で繊維を布に植え込んで絨毯やラグをつくる「タフティング」に魅せられ、技法書を出してしまったほど。会社勤めのかたわら、Neutuft(ノイタフト)という創作支援活動をしている。「どうしようかな、と悩む時間も含めてものづくりの時間。シェアスペースだと1時間いくらと取られるから、このしくみはとてもいい」。早稲田にアトリエを持っていたが、2023年7月にもくはりに移転した。初めての人でもできるチェアラグづくりといったワークショップを定期的に開いている。

JIBUNでも取材した浜ちゃん(過去記事参照)も、自ら描いた絵をラグマットにすべく、タフティングに挑戦していた。実は浜ちゃんも共同オーナーの1人。「ランニングしていたらこの場所を偶然見つけて、何だろうと入ったら面白かったんで」。さすが「思い立ったら吉日」の人だ。棚も借りていて、作品を展示中だ。

私市さんは10月17日(火)夜に、大塚地域活動センターのOosトークイベントに、共同オーナーでもある夫の憲司さんと共に登壇する。詳細はこちら。申し込みはこちらから。また、11月19日は、ワークショップや物販もあるもくはり文化祭2023を企画している。詳細はこちら。(敬)


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